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1日1回笑いましょう


by outigohannhe
1972年
吉田拓郎が青春を詩い、フォークは全盛となり、17歳の私達へのBGMとして、背中に聴いていました。
バイクは「自動二輪」免許で750ccの大型バイクまでOKでした。
ヘルメットの義務付けもなかったし、
この年の2月浅間山荘事件から、連合赤軍事件が大量殺人事件へと問題の本質を変えていきました。
「永田 洋子」という名前が大きく新聞紙面を埋めました。
良くも、悪くも「熱い」時代がそこにありました。

1972年の家出は、そんな時代の出来事でした。
B君もE君も故郷で、年を重ねています。
A君だけは、消息不明です。
最初は、面白い思い出話として、記憶の中から綴っていました。30年という時を経て見つめていくと、この家出はA君をサポートした気持ちで、始まった事を知りました。
A君が優しくて、家族思いの少年だった事が改めて伝わってきます。それ故のA君の悩みの重さも。
A君、青年としての「夢」を追いかけていたのでしょうが、結果はどうでもいいと思います。
その時代、一生懸命だった、事信じています。
消息不明でも、友情は変わりません。
小さな町で細々と生きている私ですが、応援しています。
B君が真面目な友情を温めていた事。30年を経て知りました。
振り返るには、首が痛くなる位の時間をかかえて、後戻りすると、色々な物が見えてきます。
小さな出来事がひとつ、ひとつ重なって積み上げた「自信」を作ります。
思い出とは、こんなにも「愛おしい物」でした。
# by outigohannhe | 2006-07-27 23:31 | 1972年の家出

1972年の家出 終わり

B君が静かにカレーを食べていました。反省しているんだと思って見ていたら、始まりました。トークショーです。
「今日のカレーは、学食カレーじゃない。」「レストランの濃厚な、味」「牛肉の味」
以前B君が、学食で食べたカレーに、鶏がらの首の部分がそのまま入っていた事があって、
もちろん、その時も食堂中が、揺れる位のパフォーマンスで、大騒ぎでしたが。
牛肉のスープは凄い事だと、よく言ってました。B君の話は続きます。
「俺達は、本気で土木作業の仕事をして、働くつもりだったんだ。」「E君が、面接で、高校生です。なんて、聞かれもしないのに、言ってしまったのが、全て計算が外れたんだ。」
「打ち合わせ、ちゃーんとしたのに」
「ごめーん、俺その時、トイレだった」とE君
「それに、高校生って言えば、簡単な仕事を選んでくれる。と思って」とE君
「皆の為を考えたんだけど」とE君 (彼は、着替え用のYGパンツは毎日取り替えていたそうです)
「打ち合わせに一番チェックの要るEがいなかったって、」
「でも、俺達、助け合って暮らしてたんだ」
「金が無いから、スーパーでのりたまを買って」「食堂で、大盛り飯を3つ頼んで5人で分け合っていたんだ」
「男の友情ってスバラシイ」
すると、4人が一斉に「楽しかったねー」
「それから」と私
B君のテンションは上がってきました。
「それから、海に行って、砂浜で皆で、遊んだ、夕日がきれいだったなー」
「人生をやり直そうと、決意したんだ、。5人で、夕日の海辺で、カーコイイ」
B君、止まりません。
「じゃあ、B君達の家出を、泣いて止めたって言う彼女には、なんて説明するの?」
「そ、それは、話せば、はなせ、ば、…わ、か、る、…はず」少しトーンが下がります。
「あ、赤い糸よ」 「小さな恋のメロディ、 さ」
懲りない B君です。
放課後 友達に付き添われて4人は、それぞれの自宅へと、向かって帰りました。
あの、部室で着ていたちぐはぐな、体操服は家出した時の服に着替えて。
# by outigohannhe | 2006-07-27 22:45 | 1972年の家出
次の日
学食で、いつものように食堂の仲良しのおばちゃんに、「揚げパン」の予約を頼みに急いでいると、A君の友達が「おばちゃん、頼むからお願いします。」切ない声が聞こえます。
「何、を頼んでるの」「食券を早いけど、売って下さい」
「割り込み、常習犯グループは、だめっ!」おばちゃんの大きな声が響きます。
A君の友達は、今度は私に頼みます。
「君が言ってくれないか」
「どーしてよ」
「……。」
「昼休み、鑑別所通りの部室に集まって」
「俺から聞いた事はないしょにしてくれよな」
昼休み、部室のドアを開けてびっくりしました。私はドアを閉めるのも忘れて立っていました。

いるのです。体操服を着た、あの5人組が。家出の5人組が。それも学食のカレーライスを食べているのです。
あの日みたいに。
3皿のカレーを5人で食べていました。
「やっと、白メシとおかずが食えた」
「のりたまご飯は、わびしかったねー」
だれが連絡したのか、A君のお姉さんが部室に入って来て、黙ってA君はお姉さんと部室を出て行きました。
出て行く時、目で私達に「すまん」と合図を送って。
A君の後ろ姿に、ぐっときた私は、感情的になった声で「だいたい、どれだけ大騒ぎになったかわかってるのー」、叫びました。
「ごめん」
「ツーリングでもやってたんでしょう!」
「ちがうよ。土木作業の面接に行ったんだけど、みんな高校生が、バレて、駄目だったんだ」
「他のバイトも捜したんだけど、金を持っていたのがB君だけやったし」
E君の説明は続きます。
「B君の所持金だけで、5人の生活費は、無理だったんだ」
サラのYGシャツと笑顔でリュックに詰めてたE君は、所持金は500円だったと言います。
5人組の中で、たった一人の他高校のE君の見慣れない、体操服姿、
よーく見ると、5人はそれぞれ、まばらな体操服姿です。
あちこちの部室から、拝借したらしく、汚れた体操服とちぐはぐな、体育館シューズをはいていました。
# by outigohannhe | 2006-07-21 01:26 | 1972年の家出
説明は続きます。
「それだけで、家出を決めたの!」
「まだ、色々ある」
「B君なんか、彼女が、泣いて反対するのを、男の契りだ!ってタンカを切ったって言うし」
「じゃあ、あとの二人は何なのよ」
A君のお姉さんと話した後の私は、冗談だと、軽く聞いてた自分の無責任さに少し、苛立っていました。
「それが…」
「バイクを借りに行ったら、そいつが、じゃあ、俺もって、そしてその友達がそんなら、俺も」
どうも、家出をカッコイイと思っている、様子、です。
彼ら5人が真剣に悩んでるA君の気持ちに同情していたのが、準備をしている間にお祭り騒ぎに
なっていった様子が、手に取るように見えてきました。
# by outigohannhe | 2006-07-21 00:41 | 1972年の家出
A君のお姉さんは、最後に「ありがとう」と言って別名鑑別所通り(部室)を出ていきました。
A君のお姉さんは、優等生、そのままの人でした。
生徒会のリーダーで、クラスマッチも、野外活動の「草取り」もみんなを率先していく人でした。
私は尊敬していました。目標でした。
私は、お姉さんが出て行った後の部室で、ぼーっとしていました。
しばらくして、A君やB君の仲間が入ってきました。
「何、だって」「お姉さん、ひどく心配してたみたい」
「どーして、家出になってしまったのよ」
「A君は、親父に対して本気の家出だったんだけど」
「それに、B君も俺も親父にコーギする」って言い出して。
「Eは、そんなら、俺も仲間に入れて。親友のA君に受けた恩義が、ある。」
# by outigohannhe | 2006-07-15 20:29 | 1972年の家出