1日1回笑いましょう


by outigohannhe
その日、私はA君のお姉さんに呼び出されて、通称、鑑別所通り(部室の天井と壁に網が貼ってある事で、いつの間にかついた名前)
と呼んでる文科系のクラブの部室にいました。

「Aは、何を悩んでいたか、知ってる?」
「一緒に家出した、友達とはどこで知り合ったか教えて」
「えっ、本当に家出したんですか」
「知らなかったの?」
その場の空気の重さで、冗談だと思っていました。とは言えませんでした。

あの出陣式は、本物だった、と思うと、
A君のお姉さんの深刻な感じと、あの出陣式のお笑いのネタみたいな状況の違いに
私は、何とも言えないショックを感じました。
                    (つづく)
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# by outigohannhe | 2006-07-12 01:53 | 1972年の家出
「家出、いえで」と相変わらずE君は、騒いでいました。
私は、一緒に騒ぐ気になれず、帰ろうとしていました。
今度は、「出陣式をするから、拍手で見送って」と言い出します。
そして、拍手の人数は多い方がいいから、ちょっと待って、という事になりました。

帰ろうとしていたら、数人の少年は「さあ、行くぞ」と言ってE君の部屋から出て行きます。

私も含めて3人の少女もE君の部屋を出ていきました。
外に出たら、3台のバイクに2人乗りした5人の少年がいました。

A君もB君もいます。E君も「グンゼYGシャツ」の入ったバッグを持ってニコニコしてます。

B君が言いました。「出陣しまーす」
パチパチパチ…
「行ってらしゃーい」

又いつもの悪乗りジョーダンが始まった。と私は思って要請に応えて拍手をしていました。

1972年、秋の終わりでした。
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# by outigohannhe | 2006-07-10 00:22 | 1972年の家出

1972年の家出No8

その日、E君家に放課後、寄るようにと誰かが、私に伝えにきました。
携帯電話など、無い時代だったんだけど、連絡網がありました。
E君は、隣町の高校だったのにも関わらず、漏れなく連絡網は作動していました。
今もって、不思議ですが。

E君の家に行くと、数人、友達の友達がいました。
A君もB君もいました。
何だか、ざわついていた事を覚えています。

E君が梅酒じゃなくって、下着を持って私の前に来て「シャツ何枚持って行こうかな」
「グンゼYGシャツ」
「どーしたと」
「うん、家出する」
「えーっ、ほんと」
「家出、いえで」 ルンルン気分のE君です。
そう言って、E君はバッグに荷物を入れはじめました。
旅行かキャンプでも、行く感じです。
 (つづく)
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# by outigohannhe | 2006-07-09 00:33 | 1972年の家出

1972年の家出No7

B君の「ふられた事件」から一週間が経ちました。

B君彼女とは、別れる事もなく、二人が放課後の教室で、話している姿を何度か見る事がありました。
相変わらずB君は「俺達は赤い糸でつながっているから、同じ大学へ行く」などと、言い
クラス担任を、殴るチャンスを逃した。とも言ってたようでした。

A君は、自宅には、帰らないで、あの日から、E君の家に泊まったまま。
E君は恩義ある、A君の身の周りの世話をかいがいしくしてました。
というのも、E君はA君のおかあさんから、早く家に帰るように、頼まれていて、自分の父親には、A君を泊めてる事を隠していました。

E君家に、自然に仲間が集まるようになって、いきました。
                     (つづく)
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# by outigohannhe | 2006-07-07 23:49 | 1972年の家出

1972年の家出No6

E君を紹介します、

彼は酔うとA君を恩人なる親友と呼びます、

E君が幼稚園時代、下痢気味でウンチのおもらして、泣いていたらA君が「ちり紙」自分の幼稚園のバッグから出して持ってきてくれた、そして、先生にそおっと話してくれた。告げ口じゃなくって、話してくれたんだ。と、少し涙声で言います。

乾杯が大好きで、彼の家に仲間が集まると、自家製の梅酒をE君が持ってきます。
グラスにつぎわけ、乾杯が始まります。二杯めからは、彼のグラスにだけ、梅酒を注ぎ、「いっき、いっき」を繰り返します。4杯続くと、「みーんな、もう、ふらふらして」(酔ってるのはE君だけ)
「よし、ドスを貸してくれ」「オヤジとサシで話をつけてくる!」
栓抜きを持たせる。と、両手で本物の刃物でも持ったみたいにして部屋を出て行きます。
1分もすると戻って来ます。

「やっぱ、オヤジは大事」

私は一度だけ、この場面に遭遇しましたが、仲間は「毎回、同じ事を繰り返すんだけど何度みても、笑ってしまう。」と笑いながら教えてくれました。

A君もE君も心根の優しい少年でした。
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# by outigohannhe | 2006-07-06 22:10 | 1972年の家出

1972年の家出No5

その「ふられた事件」から数日して、同じ幼な馴染で高校は別のE君家に、
立ち寄る用事があって
私は、E君の家に向かって歩いていた。

この辺だったと歩いていたら、E君が庭先から団扇を持って出てきた。
「何、それ」
団扇を指して、私は尋ねた。
「ふろたき、俺これ、やらんと、メシ、食えん」
彼は姉、妹と両親の五人家族だけれど、気がやさしいのか、よく家事を手伝っていた。

「もうすぐ、風呂焚き終わるから、上がって。」と玄関を開けてくれた。
玄関を開けたら、そこにデカイ靴が数足、並んでいました。
E君の部屋がある、2階から大きな笑い声が聞こえていました。

「あいつの左傾きの首をー」
ふられたと大騒ぎしたB君の声が聞こえてきました。
                    (つづく)
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# by outigohannhe | 2006-07-05 08:31 | 1972年の家出

1972年の家出No4

B君の状況説明が始まりました。

「クラス担任が、わざわざ、彼女の家に俺がこの前、タバコで処分を受けた事を、電話連絡して
俺と付き合う事を、クラス担任として、勧めません。って言ったそうで。彼女はオヤジから
叱られたって
もう会えない。って泣いて言うんだ。
あいつ(クラス担任の事)毎日、寝違えたみたいに、首を左に傾けてからー。
今度、あいつ、ぶん殴って、あのー、左に傾いた首を今度は、右に思いっきり傾けさせてやる!」
[ぶ、ふふふっ!そりゃー賛成、さんせい」と
黙々とカレーを食べてた、A君が突然、笑いながら、言った。
続けて「でも、今まで、左に傾いていたわけだから、1回殴って、普通になるわけじゃん、2回、殴って右に傾くんだぜ。」

「……。」
二人は、「やーっ、たーっ!」「2回、なぐるんだ。」二人は、握手をして、喜び、
乾杯、乾杯、今日の水は美味しいと言ってた、グラスにを持って乾杯を連呼した。
私にも、グラスを持ってきた。話は続いた。

17歳、高校2年生、その頃、煙草で処分を受ける事は、彼らの間でハクがついて、
一人前だとか、流行っていた。
A君より少し前に、処分を受けてた,B君はA君に向かって「A君、も仲間になって、おめでとう」

私は、A君とB君とも、幼稚園から同窓生でした。B君は、小学校の時なんか、すぐ赤面する
純情な小学生だった事を思い出していました。
豆電球、って呼んでた、あの頃はかわいかった。

つい、1時間ほど前、塾の玄関で、泣きそうだった、彼は、まったくの別人でした。
                                            (つづく)
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# by outigohannhe | 2006-07-04 00:04 | 1972年の家出

1972年の家出No3

解きかけの問題を、思い出して急いで塾の教室へ戻って先生に「せんせい、気分が…」と話して慌てて約束の喫茶店へ行ってみると、見慣れた二人の少年は大盛りカレーを大口でぱくついていました。
「うめえ」「今日のカレーは特別うめえ!]
[カレー、食いながら飲む水はうめえ」
めえ、めえと、明るい二人の少年、

慌ててここに、立っている私は、いったい何なんだろう。
(つづく)

1970代はフォークソングの時代でした。

 吉田拓郎の「青春の詩」の一節です。
喫茶店に入って、彼女と二人で、コーヒーを注文すること
ああ、それが青春

映画館に彼女と二人で入って、彼女の手を握ること
ああ、それが青春
私も少年A君もB君も17歳でした
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# by outigohannhe | 2006-07-02 19:30 | 1972年の家出

1972年の家出No2

いつも冗談なのか、本気なのか不明なノリのB君の、始めて見た演技でもない顔色にびっくりして、私はさっとB君の手を取って、急いで玄関のドアを押して外に出ました。
「どーしたの」
「彼女が、別れるって言った」
絞りだすような声と、今にも涙がこぼれそうな目元は、やっぱり演技ではない、様子。
つい先日、高校の食堂で会った時、
「俺と彼女は、小さな恋のメロディなんだ。」とおどけて笑っていたのに。
「解ったから、塾が終わるまで、いつもの喫茶店で(当時はカフェをそう呼んだ)待ってて。」
うつむいたままB君はうなづいて、乗ってきたバイクの方へ歩きだした。
ほっとして、早く解きかけの問題を解かなくっちゃ。と振り向いたら、
胸元に、ご飯粒をつけたトレーナーを着て、裸足で立ってるA君がいた。
「Aちゃんは、何なの」
「煙草で謹慎処分になった事が親父にばれた」
「親父が本気で、殴ってきて、本気でよー」「殺されそうだった」
「窓から飛び出してきた」
「飯、食ってたけど、咄嗟に一口ほおばったけど、こぼれて…」
それがトレーナーについた御飯粒らしい。
「走って逃げてたら、俺を追い越したバイクが止まった」
「B君のバイクだってんで、俺も乗せて」

「バイクに乗ったら、B君が俺は死ぬとか言ってスピードをすげえ上げてー。きょおふだった」
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# by outigohannhe | 2006-07-01 22:17 | 1972年の家出

1972年の家出

その日、私は生徒数が数人程度のアットホームな学習塾にいた。
先生の自宅で、夕日が差し込む2階が教室でした。

中年の先生の部屋には、その雰囲気からは全く想像もできないピアノとフルートがありました。
時々、塾の始まる時間より早く行くと、ジャズが教室に流れていました。

そんな秋のある日、いつものように問題を解いていたら、先生から
「君に、急用だと友達が尋ねてきているよ」と言われて、階段を下りて玄関まで行くと
そこに、幼な馴染で同じ高校の友達が二人、立っていました。

裸足で、トレーナーの胸元にはご飯粒をつけて、気まずそうな少年A君。目元に涙をためて蒼い顔して、ぼーっと立っている少年B君。

(この話は、長くなるので続きは明日にします)
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# by outigohannhe | 2006-06-30 06:08 | 1972年の家出